原稿料のみで生活が可能か?
コンクールで受賞したり編集者に見出されたりして、いよいよ童話作家デビューを果たしたとします。では、その後、直ちに童話作家として独立し、その原稿料のみで生活していくことが可能なのでしょうか?
もし、デビューしてそれほど年数が経っていないという段階であれば、それはまず無理だと考えたほうが良いでしょう。というのも、童話作家として独立するためには、確実な収入源となるロングセラー作品を幾つか(できれば10冊以上)持っておく必用があるからです。
これは、童話や絵本といった子供向け書籍の売れ方とも関係しています。一般向けの小説やビジネス書であれば、書いた作品がいきなりベストセラーとなって印税生活に入る、というシンデレラ・ストーリーも有り得るのですが、児童文学の世界に限っては、それはまずないと考えたほうがいいでしょう。
その代わり、児童文学作品ではロングセラー化する可能性を秘めています。これは、一般書の寿命がかなり短いのと比べて対照的です。例えば、子供向けの絵本である『ぐりとぐら』という作品は、1963年に生まれた作品ですが、世代を経て今も子供たちに愛され、読まれています。シリーズの累計発行部数は、既に2,000万部を超えているともいわれます。
このような、時代を越えて子供たちに愛される作品を書くことができれば、当然、作家として執筆活動に専念することができるでしょう。しかし、それまでは、何らかの仕事で最低限の生活費を確保しつつ、一方で、時間を見つけて執筆活動を続けるしかありません。
童話作家であれば、保育士や小・中学校の教師など、子供と接する仕事をしながら、同時に作家としての腕を磨かれている方も多いようです。いずれにしても、長期的な視点で取り組む必用がありそうです。
童話作家の使命
童話作家が収入を得にくい理由のひとつに、子供たちがあまり本を読まないということも挙げられます。読書率そのものは、学校での読書推進活動の成果もあって、ある程度のラインを維持しているようですが、童話作品の出版点数と比べて、読書人口が増えているわけではないので書籍の売上げはなかなか増えないようです。
これは、ゲームやインターネット、マンガ、アニメなど、刺激的で魅力ある娯楽があまりにも多く存在し、読書に費やす時間がなかなか増えないからでもあります。
ただ、幼児期や小学低学年の子供たちにとっては、親の影響がかなり大きいので、本好きな親が増えれば、子供たちもまた本好きになるでしょう。もっともっと親が本に興味を持って、良い本を子供たちに繰り返し読んであげて欲しいものです。
いじめなど、子供たちが引き起こす悲惨な事件を見るにつけても、小さい頃から、良質の童話や絵本で情操教育することは非常に大切なことです。童話作家や絵本作家というのは、こうした大きな使命を秘めた仕事でもあります。
是非とも、感動的な作品を次々と生み出すような優れた童話作家が、数多く誕生することを願っています。当サイトが多少なりとも、そうしたお役に立てれば幸いです。