自費出版とは?
ここでは、通常の出版形態である商業出版ではなく、自費出版と呼ばれる出版方法について、その魅力や問題点について考えて見ましょう。
自費出版というのは、文字通り、出版費用を著者である自分が負担して出版する方法です。当然、自分が出版費用を負担しているわけですから、本文から装丁、デザインに至るまで、かなりのところまで希望が通ります。
また、商業出版であれば、売れる見込みのない本は決して出版されませんが、自費出版なら出版社にとってもリスクがないので、料金さえ支払えば出版してもらえます。
このように、自分の思い通りの内容の本が、誰にでも出版できるというところが、自費出版の最大の魅力でしょう。少々費用が掛かってもいいから、「自分の書いた作品を本にしたい」、「思い出をまとめた自分史を作りたい」という方にとっては、嬉しい出版スタイルといえます。
一方で、デメリットもあります。最大のデメリットは、比較的高い出版費用です。また、一般書店での販売ができないという問題も抱えています。
通常、書店に並んでいる書籍というのは、出版社が刊行し、出版取次を経て一般書店に流通したものです。しかし、自費出版ではこうした流通経路に乗らないため、個人的に販売するしかありません。
もし、自分が何らかの人気サイトを運営しているなら、そうしたサイトを使って販売するという方法もありますが、大部分の方はそうした販売ルートを持っていません。大抵は、友人や知人にプレゼントしたり、個人的に買ってもらうというスタイルをとっています。
こうした観点から考えても、自費出版は、あくまで個人的な楽しみの範疇に入るものであって、営利を目的とする出版には適していません。
ちなみに、商業出版された書籍の表紙には、ISBNと呼ばれる書籍コードが記載されています。これは、世界共通の書籍コードですが、例えば、ISBNの後に4が記載されていれば、その書籍が日本で出版されたことを意味しています。
自費出版の場合、通常、このISBNコードが記載されていないため、流通ルートに乗せることができません。しかし、実を言うとこのISBNコードは、個人的に取得することも可能です。別途、登録料がかかりますが、これを取得しておけば、何らかの流通ルートに乗せることも不可能ではありません。
自費出版の落とし穴
さて、自費出版では、通常の販売ルートに乗らないという問題点に触れましたが、こうした部分をカバーするサービスを展開している自費出版系の会社もあります。
例えば、一時期、隆盛を極めていたある大手自費出版系の会社では、共同出版や協力出版等の名称でサービスを展開していました。これは、名目上、著者と出版社が出版費用を互いに出し合って本を作り、一般書店への配本等も行えるという画期的なサービス内容でした。
しかし、実際には、高額な出版費用を支払ったにも係わらず、一般書店への配本はほとんどなされず、形式だけの販促活動をしただけで終っていた、ということで社会問題化しました。
確かに、プロによる十分な編集作業がなされていない素人作品が売れるはずもなく、限られた書棚スペースしか持たない一般書店がそう簡単に並べてくれるはずもありません。
何れにしても、営利目的で本を出版したいなら、ハードルは高いけれども、商業出版を目指すべきでしょう。もし、自費出版という出版スタイルを選ぶなら、それで収入を得ようとか、余り欲張らないことです。それが、失敗しないコツです。